日本の伝統と文化を体現する畳は、その構造や素材に秘められた魅力が多くあります。
特に、い草を用いた畳はその美しさと機能性で知られていますが、その製造プロセスや素材について深く知る人は意外と少ないのではないように思います。
この記事では、い草畳の部位と名称、そして構造、素材について詳しく解説していこうと思います。
畳の部位と名称と基本構造
い草畳は、主に次の3つの部位から成り立っています。
畳表(おもて)、畳床(たたみどこ)、そして畳縁(たたみべり)です。
基本的な構造は下のイラストになっています。
畳床(たたみどこ)、畳縁(たたみべり)の漢字の読み方は、ちょっと難しいですよね?
これらの部分は、畳の美観と機能性を支える重要な要素です。
ひとつずつ深堀して解説していきますね。
畳表(たたみおもて):い草で製造
い草畳の顔とも言える畳表は、見た目の美しさと感触に特徴があります。素足で歩いても寝転んでも、い草の畳は気持ちがいいものですよね?
畳表の製造は、い草を素材として以下のような手順で丁寧に行われます
- 収穫:い草を適切なタイミングで収穫します。
- 乾燥:収穫後、い草は自然光の下でしっかりと乾燥させられます。このプロセスはい草の弾力性や耐久性に大きな影響を与えます。
- 選別:乾燥したい草は、長さや品質に基づいて厳選されます。
- 柔軟化:選別されたい草は、織る際に柔軟で破れにくいよう加工されます。
- 染色:い草を自然染料や化学染料で色付けすることもあります。
- 抗菌・防臭加工:い草には自然な抗菌・防臭効果がありますが、これを強化するための加工が施されることもあります。
- 織り:最終的に、い草は縦糸として織機にかけられ、横糸と交互に織り込まれます。
- 品質検査:織り上げられた畳表は、品質検査を受けます。
- 反物の整形:品質検査を通過した畳表は、畳製作に必要なサイズに裁断されます。
- 出荷:裁断された畳表は、畳屋などに向けて梱包され、出荷されます。
これらの工程を経て、い草の畳表はその最終形態に仕上げられ、畳としての美しさと機能性を提供します。
い草はイネ科の多年草 です。
そんない草の魅力については、別記事にまとめています。よかったら、読んでみてくださいね。
畳床(たたみどこ):畳の芯
畳床は、畳表の下に位置し、畳の芯を形成する部分です。
畳床の種類には大きく分けて3種類があり、それぞれ特徴が異なります。
藁床
伝統的な畳床で、稲藁を編んで作られます。弾力性や保温性、調湿作用が特徴ですが、重量があり取り扱いには注意が必要です。
藁サンド
藁床に発泡スチロールやウレタンなどの素材を挟んだタイプです。藁床のメリットを保ちつつ、重量を軽減し価格も抑えられています。
建材床
木材チップや発泡ポリスチレンなどを使用しています。安価で軽量、断熱性に優れていますが、踏み心地は藁床に劣る場合があります。
畳縁:畳の縁取りと装飾
畳縁は、畳の周囲を囲む布製の帯で、畳表と芯材を保護し、強度を高める重要な役割を担います。
畳縁には、素材や色、柄などによって多様な種類があります。
以下は畳縁に使用される一般的な素材です。
布製(綿やポリエステル)
綿は伝統的な畳縁に多く使われ、耐久性が高いです。ポリエステルは色の保持に優れ、多様なデザインが可能です。
合成素材(ナイロン、アクリル、ポリプロピレン)
ナイロンは強度があり、洗濯にも強く、色あせしにくいです。アクリルは軽量で色の種類が豊富、ポリプロピレンはコストが低く、水に強いです。
天然素材(麻、絹)
麻は長持ちし、呼吸性が高いです。絹は高級感があり、光沢が美しいです。
畳縁は、畳の外観に大きく影響し、室内の装飾としても重要な役割を果たします。和室の伝統的な雰囲気からモダンなデザインまで、様々なスタイルが選ばれています。
畳縁に関しては、別記事に詳しくまとめているので、良かったら読んでみてくださいね。
この記事のまとめ
この記事を通じて、い草畳の構造と、それを形成する各素材の特性についてご紹介しました。畳表の丁寧な製造プロセスから、畳床の多様な種類、そして装飾的かつ実用的な畳縁まで、畳一つをとっても、その中には日本の伝統と職人の技が詰まっています。
畳は単なる床材以上のものです。
その機能性、耐久性、そして何よりもその美しさは、日本の住空間を特別なものにしてきました。この記事が、畳のもつ深い魅力と価値を再発見するきっかけになれば嬉しいです。